大阪の橋下市長が日本赤十字社の資金集めを拒否

2012年5月、大阪の橋下市長が日本赤十字社の資金集めへの協力を取りやめるというニュースが報じられました。橋下市長は、知事時代にも知事が慣例として就任する日本赤十字社の大阪支部長を辞任していますので、その流れに沿ったものなのでしょう。

このニュースでは、背景として「日本赤十字社はほとんどの自治体に資金集めをさせている」「自治体が日本赤十字社の資金集めへの協力を拒否するのは異例」といった実態も報じられ、日本赤十字社の資金集めの手法に疑問を感じた方も多いのではないでしょうか。

調べてみると、実際に多くの市町村では市町村長が日本赤十字社の末端組織の長(地区長、分区長など)に就任しているようです。しかも、市町村長が町内会組織に「日本赤十字社の資金集めへの協力」を要求して(要は、町内会の会員を日本赤十字社のために集金に回らせるなり町内会費から日本赤十字社に金を差し出せ、というわけです)、強制的な動員や徴収が横行し問題になっている地域も少なくありません。

この問題は、今に始まったことではなく昔からの構造的な問題なんですね。

その前に、実際上今あなたは賛助員という賛助の制度をおっしゃられましたが、私たちもいなかに住んでおりまして、赤十字募金というものが町内に割り当てられてくる。そういう実態を知っているのです。そうしてその中では今あなたの言われたような趣旨というものは少しも徹底していない。

つまりこれは機構にも関係してきますが、あなた方の社長、それから副社長、理事、また各支部に――支部長はおおむね知事さんが多い、それから区長とか分区長というのですか、市町村長さん、そういう行政の縦割りだけでやっておられるので、自治的な公共的な要素が少ないのです。

あなた方も赤十字精神にほんとうに立脚した活動方針がないために結局末端にいっても広がっていかない。
(第037回国会 社会労働委員会 第2号、1960/12/15)

橋下氏のように「日本赤十字社の資金集めに協力しない、日本赤十字社の役員にも就かない自治体首長」は、異例なのでしょうか? 慣例となっている「協力」を拒否した橋下市長と当然のように自治体(というより町内会組織)に資金集めをさせる日本赤十字社のどちらが「おかしい」のでしょうか?

日本赤十字社の都道府県支部では知事が支部長に就任し、役員の多くも天下りや現役の都道府県役人。そして市町村では市町村長が地域の役員に就任し、自治体(の要求を受けた町内会、つまりは一般市民)が強制的に日本赤十字社の資金集めをさせられる……日本赤十字社が掲げる「独立」「中立」というのは、誰からの「独立」で何に対して「中立」の立場に立っているのでしょうね。